心のこと…

「医科心理学」の知識を遊ぶ

男と女のラブゲーム 4

  原始時代から今に至るまで、男性にとってパートナーの女性の「身体の浮気」は、彼の遺伝子の存続に関わる大問題でした。 それを阻止する手段の一つとして「嫉妬」や、それに関連した「他の男性を寄せ付けないガード行動」があります。 それでも、女性は男性よりもはるかに狡猾ですから、こっそり彼がいない時に女性が浮気をしてしまうことはあるでしょう。

 

  では、そんな「浮気」が起こってしまった場合の(遺伝子的な)対抗手段はあるのか? 

 

  あるのです。 私たち人間以外にも浮気EPCがよく知られた動物として鳥類があります。 鳥類のほとんどは「おしどり夫婦」なんて言葉があるように、一夫一婦制で子づくり、子育てをしていきます。 しかし、鳥類のほとんどは実はメスはこっそり浮気EPCをします。 そんな時、オスはどうするか? 基本的にメスは「夫 primary partner」であるオスがいない隙に浮気をするものなので、オスは帰ってくるなりすぐにメスと交尾をするのです。 こうして、メスの体の中にすでに他のオスの精子が入っていたとしても、そこに自分の精子を入れて競争させることで、「妻」であるメスが他のオスの子どもを妊娠してしまうリスクを最小限にしようというわけです。 (もっとも、鳥は鳥頭で一所懸命にそんなこと考えて「帰ったら、すぐにセックスしなくちゃ」とやっているわけではありません。むしろ、遺伝子的にこのような行動パターンを組み込まれているものが遺伝子的に進化のプロセスを生き残り、結果的に遺伝子を増やしてきた、ということなのです。)

 

  …ということは、そうです。 私たち人間も同じことをするのです。 一般に夫婦(あるいは夫婦のようにしっかりとつきあっている男女)が一定期間一緒にいられないとします。 すると、当然、その隙に女性が浮気をしてしまうリスクが上がるわけです。 男性側はそんなことをわざわざ意識的に考えているわけではないのですが、本能的に「帰ったらすぐにセックスしよう!」となる傾向が強いことがわかっています。 しかも、そういう時は、セックスの仕方も激しく強く、ピストン運動も深くなりがりなことがわかっています。 こうやって、もしすでに他の男性の精子が入っていても、そこに自分の精子を入れて競争させることで、彼女が他の男性の子どもを妊娠してしまうリスクを低減させているわけです。 (こういうのを精子競争 sperm competitionと言い、動物行動学の分野では有名な概念です。)

 

  うん? セックスの時に激しく、深いピストン運動をすることが精子競争に勝つために有利に働く? なぜ?

 

  実は私たち人間の男性の性器は精子競争に有利になるように進化してきたのだろう、とみられています。 男性の性器(ペニス)は、セックスするときに勃起すると、長さ12〜13cmくらい、幅は3.5cmくらいでしょうか、とにかく無駄に大きくて、チンパンジーなどに比べると長さも太さも2倍くらいもあると言われています。 そのうえ、先端部分は「亀頭 glans」と呼ばれる矢じり状に太くなっている構造です。 その上さらに、私たち人間のセックスの時間(膣内に入れてから射精するまでの時間=intravaginal latency timeと呼ばれるものです)は平均7〜10分と(他の猿たちと比較しても)異常に長いものです。 いったい何のために?

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  そう、答えは「精子競争」に勝つためです。 この無駄に太く長いピストンを使って何度も入れたり出したりすることで、すでに女性の膣の中にあるであろう他人の精子をかき出す役割をしているのだろう、とみられているのです。 だからこそ、パートナーの女性と長く会えずにいた男性は、久しぶりに会ってセックスする時は、不必要に激しく、深く、ピストン運動をする傾向があるわけです。

  別に会えない間に愛が深まったんではなかったのですね。

 

参考書

Shackelford TK, et al.  Psychological adaptation to human sperm competition.  Evolution and Human Behavior 23 (2002) 123–138.

 

Gallup Jr GG.  Semen Displacement as a Sperm Competition Strategy in Humans.  Evolutionary Psychology, 2004; 2: 12-23.

 

 Shackelford TK, et al. Absence Makes the Adaptations Grow Fonder: Proportion of Time Apart From Partner, Male Sexual Psychology, and Sperm Competition in Humans (Homo sapiens).  Journal of Comparative Psychology, 2007, Vol. 121, No. 2, 214–220.