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心のこと…

「医科心理学」の知識を遊ぶ

アダムとイブの争い 8

   女性が男性を「恋人」「配偶者」として選ぶとき、特に自分の遺伝子とかけあわせる「交配」の相手として(セックスの相手として)選ぶとき、これまでお話ししてきたことのほかにも、まだまだ基準があります。 そのうちとても重要なものが「肉体的な男らしさ」です。

 

  これまた一体どういうことか? 相手の男性が肉体的に「男らしい」ということに、一体どんな遺伝子的なお得感があるというのか?

 

  答えは割と簡単です。私たちの体の「男らしさ」「女らしさ」をつくりあげているのは、大部分が性ホルモン sex steroidです。男性では男性ホルモン(テストステロン)、女性では女性ホルモン(エストロゲン)が、それぞれ男らしい顔つきき/体つき、女らしい顔つき/体つきをつくっていくわけです。 ところが、この性ホルモンというのは、分泌の優先度がそう高くはありません。動物たちは、基本的に自分のエネルギーを「自分の体を維持・成長させること」と「子づくり・子育てに費やすこと」のどちからに振り分けることをしています。当然、自分の体が満足に維持・成長できていない動物は子づくり・子育てなどにエネルギーを振り分けることなどできなので、後者の方にエネルギーを回すことを目的に使われている性ホルモンは優先順位が低くなるのです。つまり、ずっと長期的に健康で強く生きてきた動物たちだけが性ホルモンを十分に分泌することができるのです。逆に言うと、性ホルモンがムンムンに分泌されてつくられた体を持っているということは、男でも女でも、その人が長期にわたって健康で強く生きてきたこと、そのような有利な生活ができるだけの有利な遺伝子を持っていることの間接的な証拠になるわけです。

(性ホルモンは優先度が低いということは、女性であれば経験的によくお分かりかと思います。女性の性周期は肉体的・精神的なストレスによってすぐに崩れてしまうことをすでに経験している人は少なくないでしょうから。)

 

  では、「男らしさ」(=男性ホルモンの分泌の優良性)は、男性のどこに表れてくるのか? そしてそれを本当に女性たちは的確に捉えることができているのか?

 

  男性ホルモンの影響は、顔のつくりにも、体つきにも、表れてきます。男性は、男性のホルモンの影響でややごつごつした「男らしい」顔つきになるのですし、比較的肩幅が広く脚が短く全身が筋肉質の男性的な体つきにもなります。

(図に体の関節を点で示した男性の体と女性の体を示します。図を見れば一目瞭然のように、男性の体は女性の体よりも肩幅が広く上半身が横に張り出す感じになっています。一方で、体の大きさに比較して膝や股関節の位置が低く、脚が短く、重心が低くつくられていることも見てとれると思います。なぜ男性の体は脚が短く重心が低くつくられているのかというと、これはおそらく戦闘に有利なためだったのだろうと見られています。)

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  そして、女性たちは一般的に、排卵日前の妊娠しやすい時期になると特に、男性ホルモンがムンムンの男らしい顔つき・体つきをした肉体的魅力のある男性を好むようになることがわかっているのです。 驚いたことに、女性が主観的に判断する男性の顔つきの「男らしさ」は、実際にその男性の唾液から測った男性ホルモンの数値とかなり相関することまでわかっているのです。女性は、男性のかおつきの顔つき、体つきなどから、その男性の「男らしさ」=男性ホルモンの状態をかなり的確に測ることができるようなのです。さらに、 女性が男性の顔つきから判断する「男らしさ」は、やはり男性ホルモンの影響下にあると考えられる、その男性の肩幅や筋力の強さともかなり良く相関することも示されています。

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  つまり、女性たちは男性の顔つきを見るだけで、その男性の全般的な肉体的健康度、遺伝子的な優良性をかなり的確に測ることができているのでした。

 

 

 

参考書

Rodney JR, et al.  Reading men’s faces: women’s mate attractiveness judgments track men’s testosterone and interest in infants.  Proc. R. Soc. B (2006) 273, 2169–2175.

 

Shoup ML.  Men’s faces convey information about their bodies and their behavior: what you see is what you get. Evolutionary Psychology, 2008. 6(3): 469-479  

 

Brown MW, et al. Fluctuating asymmetry and preferences for sex-typical bodily characteristics. PNAS, 2008; 105: 12938–12943.