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心のこと…

「医科心理学」の知識を遊ぶ

アダムとイブの争い 7

  女性が男性を選ぶ時。自分とはどこか似ていて、しかし遺伝子的には離れている相手を配偶者(恋人)として女性は選んでいく、というところまでお話ししました。

 

  しかし、女性が男性を選ぶ基準はまだまだたくさんあります。

 

  そのうちの一つが、相手の男性が顔立ちがよく、いわゆるイケメンで、身体が綺麗に左右対称になっていて、美しいこと…です。 なんじゃ、そりゃ!です。

 

  ですが、このことには重大な意味があります。男性がイケメンであり、顔立ちも身体のつくりも左右対称で美しいことは、彼が生まれつき安定した遺伝子を持っていて、病気になりにくい健康な身体と、そのような身体をつくりだす優良な遺伝子を持っていることの間接的な証拠になるからです。

 

  なんじゃ、そりゃ!? です。 ですが、こういうことです。 つまり、生き物の身体は遺伝子を設計図にしてつくられていきます。しかし、その遺伝子が不安定であったり、感染症に弱かったりすると、身体の左右対称性が悪くなるのです。これは手足などの左右対称性にも表れますし、顔のつくりの左右対称性にも表れます。こうした左右の非対称性を専門的にはFA=fluctuating asymmetryと呼びます。FAが大きいほど、左右の対称性が悪く、遺伝子的に不安定であることを意味するのです。

 

  動物は、特にメスがオスを選ぶ時には、相手のオスが(オスの精子が)優良な遺伝子を持っていることを最優先しますので、多くの動物のメスはオスを配偶者選択する時に、FAが小さいこと、つまり身体の左右対称性が良く、美しいことを条件にします。そして、それは私たち人間においても、その通りだったのです。

 

  身体の左右対称性が以外の情報が見えないようにして、人間の女性に男性の「魅力的な身体」を評価してもらいます。すると、驚いたことに、女性たちは非常に精密に相手の男性の身体の左右対称性を(おそらく無意識的に)測って、左右対称性が高い男性の身体を「魅力的な身体」だと評価する傾向があることがわかったのです。

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  さらに、身体だけではありませんでした。顔の良し悪しもそうです。女性がイケメンだと感じる男性の顔立ちは多くの場合、身体の左右対称性と非常によく相関することがわかってきたのです。実際、左右対称性の良好な男性の顔写真ばかり集めて合成した顔と、左右対称性の悪い男性の顔写真ばかり集めて合成した顔を女性に評価してもらいます。たくさんの顔を合成してつくった顔なので、この合成写真は完全に左右対称性です。にもかかわらず、女性たちは、多くの場合、左右対称性の優れた男性たちの顔写真から合成された顔の方を、より魅力的だと評価する明確な傾向があることが示されたのです。

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(図の男性の顔のどちらをより魅力的だと評価するでしょうか? 私は男性なのでさっぱりわかりませんが、女性はだいたいにおいて「左右対称性の優れた男性たちからつくられた顔」を選ぶようです。)

 

  遺伝子的な優良性。良き種馬となること。女性たちが男性を配偶者(恋人)として選ぶときの基準の大きな部分は、生まれつきによって決まっている、その人の努力ではどうにもならないことによっている、というお話でした。 やれやれ…。

 

 

参考書

Brown MW, et al.  Fluctuating asymmetry and preferences for sex-typical bodily characteristics.  PNAS, 2008; 105: 12938–12943.

 

Peyton-Voac IS, et al.  Symmetry, sexual dimorphism in facial proportions and male facial attractiveness.  Proc R Soc Lond B, 2001; 268: 1617-1623.