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心のこと…

「医科心理学」の知識を遊ぶ

アダムとイブの争い 4

  男女が出会うことも、惹かれ合うことも、決して偶然ではないということ=類別交配 assortative mating(非ランダム交配 non-random mating)の話を続けます。

 

  私たち人類に関してみると、よく知られたところでは、身長、体型(太っている、痩せている)、知能、性格傾向、精神疾患の傾向、などの側面で「似た者夫婦」をつくる傾向があること、つまり、これらの側面で類別交配の傾向があることがよく知られています。(しかも、これらの特性はすべて、極めて遺伝性が高いものであることがわかっています。)

 

  例えば知能 general intelligenceです。知能は非常に遺伝性が強いことも知られていて、だいたい8割は遺伝によって決まってくること(養育環境などの影響はほぼ0とみなして良いほどに影響が少ないこと)がわかっています。

(実際、遺伝子的にはほぼ同一人物とみなすことのできる一卵性双生児の知能の一致度は0.8と高いのに対して、遺伝子的には普通のきょうだいと変わらない一致度しかない二卵性双生児の知能の一致度は0.4程度しかないのです。)

  しかも、この傾向は小児期の知能よりも成人期の知能の方がより強く出ます。つまり、その人が子供のうちは、養育環境による影響もある程度はあり、良い環境で育てられると、ある程度は頭の良い子になるのです。しかし、それも思春期までです。それ以降、成人期になると、その人の知能はほぼ遺伝的な要因だけで決定されるようになります。子供の頃にどんな素敵な教育を受けようが、ほとんど無関係になってしまうのです。

  このため、今回注目している、結婚適齢期の大人の人たちの知能は、ほとんどの部分が遺伝的に決定されていると考えて良いのです。

  さて、面白いのは、知能という側面で、私たち人間には類別交配の傾向がかなりはっきりとある、という事実です。実際、結婚している夫と妻の知能指数の相関をみると、その一致度(相関係数)は、0.3〜0.5とかなり高いものになることがいくつもの調査から示されています。この一致度の高さは、同一家族内(血縁者)の一致度よりも高いくらいなのです。これは、決して偶然ではないでしょう。

(男性が女性を選ぶよりも、女性が男性を選ぶことの方が配偶者選択では重要な決定要素になっているであろうことから、おそらく頭の良い女性は頭の良い男性を好み、頭の悪い女性は頭の悪い男性を好むことが多い…という何かがあるのでしょう。)

 

  そうなると、どうなるか? そう、前回のネズミの話と同じことになってくるわけです。つまり、頭の良い両親の組み合わせからは頭の良い子供が生まれ、逆に言うと、頭の悪い両親の組み合わせからは頭の悪い子供が生まれ、それが次の世代、次の次の世代…というように世代を重ねるごとに両極端化していくことになるのです。 おそらく、その結果なのです、現代の人類のような極端に知能の高い猿が進化してきたのは。

 

  いずれにしろ、女性が男性を選ぶときに重要な項目の一つ目として、「自分とどこか似たような形質を持った相手を配偶者として選びがち」ということがあります。

  知能についてもそうでした。性格についてもそうです。性格の良い人は性格の良い人と、性格の悪い人は性格の悪い人と、どうしても惹かれあい配偶者になる傾向があるのです。精神疾患についてもそうです。特に統合失調症傾向や自閉症傾向については、強い類別交配の傾向があることが知られています。精神的に健康な人は精神的に健康な人を、精神的に何かが病んでいる人は同じように何かを病んでいる人を、好きになり配偶者になる傾向があるのです。(そして、これらの特性には強い遺伝性があるために、性格の良い両親からは性格の良い子供が、性格の悪い両親からは性格の悪い子供が、精神的に病んだ両親からは精神的に病んだ子供が、社交的な両親からは社交的な子供が、自閉症的で対人関係が苦手な両親からは自閉症的で対人関係が苦手な子供が、できやすい傾向は明らかにあるのです。)

 

  いいも悪いもない。 私たちにはそういう傾向があり、この傾向こそが進化を一定の方向性に引っ張ってきた原動力の一つなのです。

 

 

参考書

 Merikangas KR.  Assortative mating for psychiatric disorders and psychological traits.  Arch Gen Psychiatry, 1982; 39: 1173-1180.