心のこと…

「医科心理学」の知識を遊ぶ

アダムとイブの戦い2

  アダムとイブの昔から(ここで言うアダムとイブは、旧約聖書のアダムとイブではなく、人類の遺伝子の起源をたどって行き着いた約5万年前の全人類共通の父「アフリカのアダム」と、約15万年前の全人類共通の母「アフリカのイブ」のことです)男性は女性よりも生きていくことがより困難だった…という話を続けます。

 

  いったい、どういうことか?

 

  そもそも、アダムとイブがそうですが、ほとんど世界中どこにいっても、男性の遺伝子のバリエーションは、女性の遺伝子のバリエーションよりも極端に少ないのです。つまり、男性は女性よりも生き残り子孫をつくり、自分の遺伝子を次世代に継承していくことがより困難であったことの表れです。

 

  有名なところでは、今のインド辺りで起こった、男性の遺伝子の消滅の歴史があります。

 

  人類は、ちょうど「アフリカのアダム」が地上に降り立った直後くらいから、発祥の地であるアフリカの真ん中あたりを飛び出し、世界各地に増えながら散っていきます。(それだけ、「アダム」の血筋が、同じ時代の原始人たちに比較して、飛び抜けて優秀であり、環境適応能力に長けていたということでしょう。)

  アフリカを飛び出した現代人類の遠い先祖たちは、まず第一波がアフリカの中央部→東アフリカ→中東の沿岸部→インド半島インドネシア→東南アジアやオセアニアまで進みました。 この第一波の海沿いルートを進んできた人たちのことを、ここではわかりやすく「ナギサ人」と呼ぶことにします。

 

  それから少し遅れて、サハラ砂漠を北上し、中東から内陸ルートを進んでいく第ニ波の人たちがアフリカを出て行きました。この内陸ルートを進んできた人たちのことを、ここではわかりやすく「ナイリク人」と呼ぶことにします。

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  さて、問題のインド付近で何が起こったのか? この土地へは、まずは第一波の「ナギサ人」がやってきて住み着いていました。

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  そして、地図を見ておわかりのように、この土地には後からやって来る「ナイリク人」が流入してきます。ここで「ナギサ人」と「ナイリク人」は出会うことになるのですが、この出会いが平和的なものであったのか、もっと物騒なものであったのかは、今となってはわかりません。ただ、遺伝子上はとんでもないことが起こっていました。

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  つまり、もともと住み着いていた「ナギサ人」の女性の遺伝子(ミトコンドリア遺伝子)は残されたのですが、男性の遺伝子(Y染色体遺伝子)はこつぜんと消滅してしまったのです。代わりに、後からやって来た「ナイリク人」の男性の遺伝子(Y染色体遺伝子)に置き換えられてしまったのです。 つまり、遺伝子的には、先住民族の「ナギサ人」の男性は皆殺しにされ、後から入って来た「ナイリク人」の男性が「ナギサ人」の女性たちを奪って行ったのです。

(このため、ちょっと考えればおわかりになるでしょうが、この土地においても、女性の遺伝子のバリエーションの方が男性の遺伝子のバリエーションよりも多い結果になるわけです。)

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  いったい、何が起こったのか? 本当に凶暴で侵略主義の「ナイリク人」の男性たちが、海沿いで平和に暮らしていた「ナギサ人」の男性たちを文字通り戦争(部族間闘争)で皆殺しにして、しかも女性たちを奪って行ったのか? 現在の地球上に暮らすほとんどの人たちの共通の祖先である「ナイリク人」って、そんなに悪い奴らだったのか?

 

  わかりませんが、いくつもの可能性が考えられます。

 

  (1)まずは、一番単純で考えやすいもので、文字通り「ナイリク人」が「ナギサ人」と戦争をして、「ナイリク人」の男たちは「ナギサ人」の男たちを皆殺しにして、女性たちを奪っていったというもの。(その「ナギサ人」の女性たちは、かつては敵だった「ナイリク人」の男たちとの子どもをつくり、増えていった、というストーリー。)

 

  (2)あるいは、戦争の末に「ナイリク人」に負けた「ナギサ人」たちは皆殺しにはされなかったものの、奴隷などになり、子孫を残せない身分にされてしまった。しかし「ナギサ人」の女性たちのうち美人だったりして「ナイリク人」の男に気に入られたものは、かつての敵だった彼らと結婚し、子孫を増やしていった、というストーリー。

 

  (3)あるいは戦争そのものがなかった。しかし、「ナギサ人」に比べて高度な文明を持ち豊かな生活をしている「ナイリク人」が「経済的侵略」をしてきたことで、「ナギサ人」はどんどん貧困化していってしまった。すると、女性たちには「よりお金持ちの男性を好む」という本能的な行動パターンがあるために(このことは、またずいぶん後でお話しします)、貧乏でさえない「ナギサ人」の男性を捨てて、お金持ちでカッコいい「ナイリク人」の男たちとばかり結婚するようになった。それが何世代も続くうちに、「ナギサ人」の男性は絶滅してしまった、というストーリー。

 

  (4)血で血を洗う戦争も、経済的な侵略もなかった。ただ「ナイリク人」の男性は「ナギサ人」の男性よりも無茶苦茶イケメンが多かったので、イケメン好きな「ナギサ人」の女性たちは、表面上は「ナギサ人」の男性たちと結婚しておきながら、時々イケメンの「ナイリク人」の男性たちと浮気(より学術的にはEPC=extra-pair couplationと呼びます)をしては「ナイリク人」との子どもばかりつくっていた。(そうとは知らない「ナギサ人」の男性は、カッコウの托卵のように、自分の子どもだと勘違いしてせっせと育てるわけです。血液型も遺伝子検査もない時代のことですから、可能なのです。)そういったことを繰り返すうちに、「ナギサ人」の男性の遺伝子は消滅してしまった、というストーリー。(女性の浮気という遺伝子継承戦略については、これもまたずいぶん後で取り上げます。)

 

   …どの可能性もありそうです。しょっちゅう「部族間闘争」(=戦争)を繰り返す人間の習性を考えると、(1)や(2)の可能性が高いのですが、(1)〜(4)すべてが理屈上は可能です。

 

  いずれにしろ、結果は同じです。 男性は女性よりも生き残りにくい…、ということです。

 

 

参考書

Wells S.  The Journey of Man.