読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

心のこと…

「医科心理学」の知識を遊ぶ

進化論の話1

  進化論 evolutionは生物学の基本です。 おそらく未だに少なからぬ人が誤解しているのですが、進化論は決して複雑な仮定を含んだ仮説ではありません。 極めてシンプルな以下の3つの事実だけです。

 

(1)遺伝の原則:親から子に身体の作りや行動パターンといった形質は継承(遺伝)されるという事実。現在では、これは遺伝子(私たちの場合、これはDNAと呼ばれる長い二重螺旋構造の物質)によっていることがわかっています。

(2)変異・ばらつきの原則:親から子に形質が継承されるとはいえ、すべて完全に一致するコピーではなく、微妙に変異・ばらつきを生じる。このため、親がたくさんの子を産むときに、子はそれぞれ微妙に身体の作りや行動パターンといった形質が異なってくる、という事実。これは、現在では親が子を作るときに継承すべき遺伝子をわざわざ変異させ、わざわざばらつきを作ることによってなされていることがわかっています。

(3)選択の原則:形質の微妙なばらつきによって、ある個体は他の個体よりも生き延びやすかったり、死にやすかったり、子孫をたくさんつくりやすかったり、つくりにくかったりする。こうして、次世代にたくさん子孫を残せるものと、そうでないものという差ができる。=自然選択 natural selectionが存在するという事実。

 

  …これだけです。 進化論とは、実際はこれだけです。 すべて当たり前の事実です。しかし、この3つの当たり前の事実が存在することで、その当然の数学的な理論的な結果として、ある環境の中ではその環境によって自然選択されたものが増えるというように遺伝子プール全体が動いていく、ということになるわけです。 この結論は事実の組み合わせであり、仮説でもなんでもなく事実です。 進化論は完全に証明された事実なのです。

(こんなことは理系の人には当たり前のことなのですが、生物学に馴染みのない一般の人を想定して書いているので、わざわざ説明してみました。)

 

  進化論は基本的に適者生存の原理です。 しかし、ここで何が「適者」であり、何が「生存」するかということが問題であり、よく誤解されているところです。

 

  進化論において「生存」するのは、その生き物そのもの(個体)ではなく、その生き物をコードしている遺伝子 geneのことです。 極端な場合、その遺伝子が生き残り増えていくためには、その乗り物である個体がどんな悲惨な目に遭っても、死んでしまっても、全然構わないのです。 そして進化論における「適者」とは、単純にその遺伝子が継承され増えていくことです。決してそれ以外の何かにおいて優れているとか、価値があるとか、上とか下とか、高等とか下等とか、そういうことを意味しないのです。 日本語の「進化」という言葉は、どこか「良い方向に向かう」的な意味が含みとしてあるので、この点は非常に誤解されがちです。良いも悪いもないのです。優も劣もないのです。ただ増えることに成功するようななんらかの形質を備えていれば「適者」というように表現されるわけです。

 

  良いも悪いもない、私たちはただ私たちをコードする遺伝子が増えやすいように増えてきた結果なのだ、ということは、当たり前のことですが、極めて重要なことであり、今後の議論でもたびたびでてくることになります。

 

 

参考書

Jonathan Loses.  Biology, 9th Ed

 

Sara J Shettlewotrh.  Cognition, Evolution, and Behavior.

 

Robin Dünner.  Evolutionary Psychology.